米国市場上場の中国ADR上場廃止後の取り扱いと今後の投資方法を考察

米国市場に上場する中国ADRの上場廃止が相次いでいます。米国と中国の関係が悪化したことで、中国人民解放軍が所有もしくは関連する企業のとしてみなされた中国通信大手3社の上場廃止が決まりました。今回は米国市場に上場する中国ADRが上場廃止された場合のその後の取り扱いについて解説します。

米中関係の悪化で、米国市場上場の中国ADR上場廃止が相次ぐ

2018年頃より米国のトランプ前大統領が仕掛けた米中貿易摩擦の影響で、米国と中国の関係が悪化しています。米中関係の悪化は経済にも影響を及ぼしている他、株式市場でもその影響が表面化しています。

トランプ前大統領は中国人民解放軍が所有もしくは支配しているとみなされる企業への投資禁止を出したことについで、米国株式市場に上場する中国企業の上場廃止を決定しました。

この決定により、中国の通信大手である中国移動(0941.HK)と中国聯通(0762.HK)、中国電信(0728.HK)の3社の米国預託証券(ADR)がニューヨーク証券取引所から強制的に上場廃止となりました。

2021年8月時点ではこの3社にとどまっていますが、米国市場に上場している中国企業は多く存在し、電子商取引の阿里巴巴集団(9988.HK/BABA)や、中国インターネット検索大手の百度(9888.HK/BIDU)などインターネット関連企業を中心に多くの企業が米国で上場しています。今後も、上場廃止リスクは無いわけではなく、保有している場合は万が一に備えておく必要があります。



香港市場や中国本土市場に上場している場合は現物株への転換

米国市場に上場する中国ADRが上場廃止になった場合、香港市場や中国本土市場に重複上場している場合は、香港市場もしくは中国本土市場の現物株に転換するものです。

現物株に転換される場合は、そのまま株主としての権利を維持が可能で、配当金を支払っている場合は、米ドルから香港ドルもしくは人民元に変わりますが、配当金を継続して受け取ることが可能です。

中国移動がニューヨーク証券取引所から上場廃止した際は、香港上場の現物株に1ADRあたり5株に転換されることを発表しました。

現物株への転換については証券会社で申請する必要があります。また、現物株に転換するかどうかは証券会社によって判断が別れます。マネックス証券の場合は、中国大手3社のADRを香港上場の現物株への転換手続きを案内しています。



中国ADRの上場廃止時点の評価額相当を現金で受け取る

米国市場に上場する中国ADRが上場廃止となった場合、現物株への転換ができない場合などは、上場廃止時点の評価額相当を現金で受け取ることになります。

ADRは預託機関が原株を売却後、証券会社にてその売却代金の入金を確認できた後に、投資家側に支払われます。

中国通信大手3社のADRがニューヨーク証券取引所に廃止された際、マネックス証券では香港市場での原株への転換が可能でしたが、SBI証券では中国移動と中国聯通に限定して換金した上で支払う旨を案内しています。一方で、中国電信については預託機関より発表待ちの状態が続いています。



中国企業への投資は香港市場もしくは中国本土市場経由で投資を推奨

米国と中国の関係が悪化により株式市場でもその影響が広がっていますが、バイデン政権に以降しても関係が好転する兆しは見えません。むしろ、関係はより悪化しているようにも見受けられ、今後も中国が力をつけていくのは確実で、米国と中国の対立はより激化することも予想されます。

近年では、米国市場に上場している中国企業の間でも香港市場もしくは中国本土市場に回帰する動きが相次いでいます。阿里巴巴集団(9988.HK/BABA)はニューヨーク証券取引所に加え、香港証券取引所にも上場しました。また、中国電信(0728.HK)では、ニューヨーク証券取引所の撤退を迫られた後、香港証券取引所に上場していたのに加え、本土の上海証券取引所に2020年8月より上場を果たしました。

ADRの上場廃止に伴うリスクを可能な限り回避するには、香港証券取引所もしくは中国本土の上海証券取引所、深圳証券取引所で直接投資することを推奨します。

中国株の投資におすすめな証券会社

出典:サクソバンク証券

中国株への投資を検討している場合、はじめに中国株の取り扱いが豊富な証券会社の口座開設が必要になります。国内のネット証券で中国株の取り扱いが豊富なのは、デンマークの投資銀行サクソバンク傘下のサクソバンク証券の他、マネックス証券SBI証券楽天証券がおすすめです。

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上海証券取引所 161銘柄 235銘柄 取扱なし 取扱なし
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香港証券取引所 1733銘柄 719銘柄 1500銘柄 2058銘柄

サクソバンク証券は香港証券取引所のみならず上海証券取引所、深圳証券取引所に上場している銘柄の取引が可能で取扱銘柄数は1733銘柄となります。香港証券取引所に限っては、マネックス証券が2058銘柄と国内の証券会社では取扱数が多いです。

サクソバンク証券とマネックス証券であれば取引手数料も約定代金に対して0.25%と費用を抑えて投資が可能となっています。

ネット証券における中国株の取扱銘柄数と手数料についての詳細は以下の記事でまとめていますので合わせてご覧ください。

世界一の人口を有しており、今後も世界を牽引する経済成長が期待できる中国市場は長期的に株式投資においても有望な市場です。今回は国内で展開しているネ...

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